あたたかく力強い、そして澄みきった繊細な音色。聴く人の心を魅了する若きヴァイオリニスト、竜馬さんの奏でる音色は、まさにその人柄を映し出しているように感じます。音楽に懸ける情熱や、最近の活動で気づいた「花の力」について、きらきらした瞳で語ってくれました。
- ヴァイオリニストになろうと思ったのはいつ頃ですか?
- ヴァイオリンは5歳から習い事で始めて、ピアノの先生だった母はいつか僕をヴァイオリニストにしたいという夢があって、それを毎日のように聞かされていたら自分の夢のようになって。小学5年生のときに作文で「ヴァイオリニストになりたい、世界中で戦争・病気・災害で苦しんでいる方々のところを回って音楽で何かやりたい」と書いたんです。今もその気持ちに変わりはなくて、いつか国連のピース・メッセンジャーになることが夢なんです。
- 花は子供の頃から身近な存在でしたか?
- 母もピアノの先生でしたので、発表会のお花などいつも家に花がある環境でした。自分も子供のころからずっと、ヴァイオリンの先生の演奏会や誕生日にお花を贈る習慣がありました。先生もとても喜んでくれましたし、母の誕生日には母の好きなカスミソウを妹とプレゼントして喜ばせたり、お花が喜ばれるということは子供の頃からわかっていました。
- すごく若いころからプロの世界で仕事をされていて、すでに300本以上のドラマや映画の音楽に携わっていらっしゃいますね。
- 進学した音楽高校で映画音楽を弾き始めたのがきっかけで、大学1年生の時からスタジオミュージシャンという仕事をさせてもらう機会に恵まれました。かつてはあの葉加瀬太郎さんもいらしたところで。その中で映画音楽やアーティストのツアーなど300本以上やらせていただきました。当時は葉加瀬さんに風貌も似ていたので「葉加瀬小太郎」とか言われてました(笑)
- ところで、好きな女性もいらっしゃると思うんですけど、最近、お花贈りましたか?
- うーん、それがなかなか(笑)。僕がいつも思うのは、例えばデートの時にあげたいなと思っても、花束を持っていたら絶対に「あ、持ってきたな」ってわかっちゃうじゃないですか。しかも花束を渡したいけど、渡しちゃうと荷物になっちゃうから一度渡してまた受け取るみたいな・・・いつも花を渡すシチュエーションに悩んでしまって、なかなかプレゼントできないんです。どうすれば自然に渡せるのかなと。かといって家に贈るよりはやっぱり直接渡したいしとかいろいろ考えちゃって… でも、それを考えるのもまた花を贈ることの楽しみだと思います。
音楽も似てるんですけど、花もその空間をあやどるというか、景色をつくるというか、一輪あるだけでその場の空気が変わる。音楽の場合は演奏すれば必ず笑顔になるわけではなく、いろいろ思い出して寂しい気持ちや切ない気持ちになることもあると思うんですが、お花って悲しい気持ちになることはあまりないですよね。お花をプレゼントするともうその瞬間にすごい笑顔になる。お花にはそれだけのパワーがある、ってすごく感じています。
- 東北での活動を通じて、花にまつわる忘れられないエピソードがあると伺いました。
- 僕が観光大使をしている茨城県の常陸太田というところに、震災から10日後にやっと高速が開通して伺うことができた時のことでした。僕の音を聴きたいという方が一人でもいらっしゃるならその方のところまで伺います、というお話をして、二日間で八カ所回らせていただきました。その途中のことです、「お礼に」とお花をいただいたんです。「いやいや、もうそんな、今こんなに大変な時にいいです」と最初は遠慮したのですが、「これしかお礼できないから受け取って」と、それはすごくきれいな鉢植えのお花をいただきました。
- その後、避難所の体育館に伺って、お菓子・毛布・子供の遊べるおもちゃなどいろいろプレゼントさせていただいて演奏させていただいたんです。皆さん喜んでくださいましたが、そこは殺風景な青いシートの環境で・・・その様子に僕たちは先ほどいただいた鉢植えのお花をこちらで飾っていただけたら、って思ったんです。自分たちはまだ滞在もあって持っていてもせっかくのお花を駄目にしちゃうかもしれないと思って。そうしたらお花がポンと1つあるだけですごく喜んでいただいたんです。「あ、僕たちは気づかなかったね」って。どうしても食料とか服とか支援物資に目がいっていたんですけど、お花をプレゼントするということがこんなにこのときに喜ばれるものなんだと思って。僕たちの演奏と同じで、お花は衣食住という意味では生活に絶対に必要なものじゃないです。
でもプラスアルファの部分で心を満たす、心のケアのようなことができる力がお花にはある、というのをすごく感じました。それから次の日以降は別の場所に伺う際にお花屋さんに寄ってお花をいくつか買っていきました。
やっぱりすごく喜ばれて、そのときに一つ花のパワーを気づかされました。
- もう1つ。つい先日、陸前高田に伺ったんですけど、僕は初めてで。そうしたらもうがれきの山。何もどうにもなっていない様子にすごくショックを受けました。町も本当に黒・灰色・茶色のがれきの山、お店もないし、町に色がないんです。そんな中で、たまたまだと思うんですけどあちこちに自然発生的にコスモスが咲いていたんです。
ショックを受けている中で、唯一の色彩だったそのコスモスにすごく癒されたんですよね。お花というものにここまで癒されたなと自分が実感したのは初めてでした。
そして僕もこのコスモスのように、一筋の光じゃないですけど、自分の音楽が皆さんの生活に寄り添って笑顔につながるようなことができたらいいなと思ったんです。陸前高田の方に「忘れないでほしい」と言われて、僕はまた必ず戻りますって約束をしました。東北出身や在住のメンバーを仲間にして、一緒に陸前高田に直接行って、フルオーケストラの演奏を届けようということになって。今着々と準備しています。
花と音楽にできること・・・東北の地で気づかされたことでした。
- 昨年から花男子※さんたちと一緒に、男性から女性に花を贈るパフォーマンス活動をされていますね。ご自身の花贈りにも影響ありますか?
- スマートにお花を買ってスマートに渡すという域にはまだなかなか、経験もまだまだ。
でも、スマートがいいということではなくて、それが別にどんなお花だろうがいくらだろうが、男性が愛する女性を想って、まずはお花屋さんに一歩踏み出してほしいですね。日本ではまだそういう習慣があまりないわけなので、自分のためにお花屋さんに入ってお花を買ってきてくれたなって、それだけで素敵だと思うんですよ。
花贈りが、愛する女性の笑顔だったり、二人の新しいストーリーをつくるんだな、というのを、花男子さんとの活動を通じて体感しています。
花というと僕の中では=女性っていうイメージがすごく強かったんですが、男ばかりの花男子さんに出会ってすごく新鮮でした。男性?!しかもすごい格好いいことをやっているなと思って。花業界、ハートがすごい熱い人たちがたくさんいらっしゃいますよね。お花の生産者の方とお話させていただくこともあるんですけど、花にもひとつひとつストーリーがあって、その物語の続き、花を贈る・贈られるというところまでがストーリーなんですよね。
お花にはそういう想いが詰まっているから、だからそこには笑顔が生まれてくるのかな、という気がするんです。
(取材&TEXT N.OGAWA PHOTO T.SASAKI)
この曲は1月30日にユニバーサル ミュージックから発売されます洋楽ラヴ・ソングの
オフィシャルタイアップコンピ『LOVE WORDS』の中にボーナストラックとして収録されます。
『flower valentine』を作曲された際の、曲に込めた想いなども語っていただいていますので、
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