いわゆる「月9」※を始め、数々の人気ドラマやトレンドを作りだしてきた敏腕ディレクター。今でこそ、奥さんの誕生日には毎年バラ100本贈ったり、花贈りがすっかり身についているようだが、実は最初からそうだったわけではない。ここに至るには数々のエピソードがあったようだ。それは……
- 「薔薇のない花屋」はどういう発想から生まれたのですか?
- 花屋を舞台にしたドラマがやりたかっていうよりは、「バラがない花屋」というありえないシチュエーションが脚本家の発想でした。
ドラマを制作するにあたっては、いろいろな花屋を見てまわりました。花屋のシーンはセットで作っていたんですが、毎回花を並べないといけないので、花屋の前で立ち止まってはディスプレイなんかをジッと観察していましたね。ドラマの後半で、「バラを作る」という設定になっていたので、バラ農家もいくつもまわって、バラ作りの大変さも教えてもらいましたよ。 - ドラマの前後で、花や花屋についての印象は変わりましたか?
- 「バラ」はかなり意識するようになりました。あと、「花屋さんに悪い人はいないな」と思いました(笑)花屋って大変ですよ。儲けだけを考えていたら、できないですよね。心が優しくないと。花をよっぽど好きじゃないとできないと無理でしょう。
ドラマが始まってから、美術の花担当が、花をシーンごとに小さいものや大きいものをアレンジしてくれたんだけど、「花屋ってセンスも重要だな」と思いました。
- 今まで心に残っている「花」に関するエピソードはありますか?
- 20年くらい前だったか、ある女優さんの誕生日パーティーに呼ばれたんですよ。当時は僕もまだ若くて、手ぶらでいったんですが、ある男性のタレントさんが「僕はまだあまり売れてないし、まだお金もないけれど、そのうち売れるようになったら、111本のバラ(女優さんの誕生日が1月11日だったため)を贈りたいと思います。だから、今日はまだ1本だけです」と。かっこいいこと言うな、と思ったのを覚えています。あれからかなり年月が経っているけれど、彼は111本のバラを贈ったのかな?(笑)
- ご自身では花は贈りますか?
- 僕は結婚してから女房には誕生日と結婚記念日には、100本のバラの花束を贈っています。最初はかっこつけて、真っ赤なバラだけ100本。最近は、10色のバラを10本づつ用意して、家に届けてもらっています。たまたま在宅だった時に、僕が受け取ってしまったりしてね。「あらっ、今年は届かなかったわね」と言われる時もあったりしますけれどね。 でも、この話をするだけで、女性たちは「素敵!」と目の色が変わりますね。(笑)
- 花を贈るのは慣れていらっしゃるようですが、最初から平気でしたか?
- そんなことありませんよ。最初に花を贈った時期は覚えてないのですが、「花なんて喜んでもらえるんだろうか?」「どう注文していいのか?」「希望の大きさをいえばいいのか、予算をいえばいいんだろうか?」など、買う前に結構悩みましたね。
まず最初は3,000円で作ってもらって、「こんなもんかー」と。「5,000円くらい払えば、もうちっと見栄えがするのかな?」と、次回は5,000円でお願いしたり。ある時は「もう少し大きくなりませんか?」と聞いたら、「かすみ草いれますか?」って言われて、できてみたら、「なるほどねー」と感心したり。贈るたびに学習しましたよ。
今では、「この花とこの花をいれてください」と自分で選べるようになったし、「大きければ大きいほどいい」というわけではないこともわかってきた。
- 「花を買うのがはずかしい」「花を贈るのが恥ずかしい」という男性が多いのですが、そんな男性へのアドバイスをお願いします。
- まず、自分で買ってみるのもいいんじゃないかな。最初から誰かに渡すのはハードルが高いし、照れるだろうし。とりあえず1本だけ買って歩いてたら、絶対に女性からは「あら素敵だわ」って思われますよ。
二人で花屋に行くのも新しいデ―トの形としていいかもしれませんね。彼女にその場で好きな花を選ばせて、小さなブーケをつくってもらい、それを渡して食事にいくとかね。
あと、贈り物だったら、たくさんモノはあるけれど、花って洋服とか貴金属とかはちがうんですよ。気持ちが伝わりやすいと思う。花は消えてなくなってしまうものだから「花は高い」って思ってる人もいるでしょう。でも、だからこそ、その瞬間の「気持ち」が伝わりやすいんじゃないかな?花一輪だって、喜んでもらえると思いますよ。 あと、女性ももっと「花が欲しい」、「花をもらうとうれしいというのをアピールしたらいいいと思いますよ。だって、「花好きに悪い人いない」でしょ(笑)
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月9とは、フジテレビ系列で、毎週月曜日21:00 - 21:54 に放送されている連続テレビドラマの通称。 |
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(取材&TEXT T.HAINO PHOTO T.SASAKI)