前田慎也さんが体験してきたロンドンのバレンタインはかなりロマンティック!
超一流レストランで腕をふるう前田シェフの考える、バレンタインの極意をご紹介します。
- 10年に渡り、ロンドンやNYのレストランでご活躍されてきた前田シェフ。
海外のバレンタインデーのレストランの様子をうかがいました。 - バレンタインデーがとにかく印象的だったのはロンドンでした。ロンドンではバレンタインの時期は街中がLOVE! HEART! ROSE! PINK! といった感じのイルミネーションでいっぱいになって、とにかくロマンティック。レストランも全テーブルがカップルシートになり、バレンタインのための特別メニューになり、まさにカップルのための一日なのです。レストランの店内もハートのバルーンで装飾されたり、各テーブルに花を飾るのはもちろん、お店が独自でお客様のためにフラワーギフトを用意したり、お土産にショコラを準備したり、バレンタイン仕様になります。
なかでも印象に残っているのは、ロンドンの超高級ホテル内のレストランで副料理長をしていた頃に目にした光景でした。
ディナーは二部制で、夕方からの会と夜9時ごろからの会。夕方の時間帯には、ご近所の老夫婦のカップルたちが仲睦まじく食事を楽しんでいて、そして夜の時間帯には8割がたゲイのカップル(男性同士だけでなく女性同士も)が視線を交わしながら食事をしている・・・いろいろな愛の形があるけれど、もうそこには「愛以外の何もない」という感じ。
食事を楽しみながら、本当に大切な人と愛を伝え合う、直球の愛の姿を目の
当たりにして、胸に熱いものがこみ上げるほど感動してしまったのです。
- イギリスではバレンタインディナーのデートがすごく大切、と聞いていましたがそれは本当だったよう!
ロマンティックなディナーは、具体的にはどんな風に演出されるのでしょう?
そこでまず、若くして成功された前田シェフの、ロンドンでのキャリアがどんな風に始まったのか聞いてみました。 - 僕が料理人を志したのは24、5の時と遅かったのです。ワーキングホリデーでオーストラリアに語学留学した際、たまたま皿洗いのアルバイトからはじめた寿司店で有名な寿司職人との貴重な出会いがありました。その後、留学でロンドンのビジネススクールに通う間も、生活費を稼ぐために割烹料理店でアルバイトしました。そのお店でも、後にロンドンでミシュランを獲得する日本人の料理人に、徹底的に和食の基礎を仕込んでもらいました。
超一流の料理人たちとの出会いが、僕を料理の道に導いてくれたのです。結局学校を辞めて、せっかく海外にいるのだから西洋の料理を学ぼうと、当時、英国史上最年少でミシュラン三ツ星を獲得したマルコ・ピエール・ホワイト氏に師事(後に出会うゴードン・ラムゼイ氏※の師匠でもある)しました。そのマルコ・ピエール・ホワイト氏とゴードン・ラムゼイ氏の影響が現在も私にはとても大きいのです。(※ゴードン・ラムゼイ氏はイギリスのTV料理番組『ヘルズ・キッチン』などで世界的に有名なシェフ)
- 2人の3ツ星シェフの哲学、それはまず、レストランに訪れる全てのテーブルの全てのお客様がVIPであるという考え方。僕も心から共感し、日々実践しています。
私たちのレストランでのお食事は決して安値ではありません。
そうした食事が日常の方もいらっしゃれば、人生の特別な日のための非日常のご経験の方もいらっしゃる中で、それぞれのお客様がどういう方かはわかりません。絶対に失敗できないとなれば、全てのお客様に対して、私のレストラン=私の家にお客様を招いているように接するのです。
美食(ガストロノミー)を完成させるには、1つのテーブルをおもてなしするために、自分たちの持っている全力を尽くして、お帰りになるその瞬間までトータルなエンターテイメントとしてサービスをご提供しなければならないのです。
そうした哲学のもと、僕がロンドンで見てきたバレンタインディナーを、今年はぜひ「ゴードン・ラムゼイ at コンラッド東京」でお楽しみいただきたいと考えています。 - 前田シェフの素敵なプランについてはこのインタビュー記事の最後にご紹介するのでお楽しみに。ちなみに今回、前田シェフから私たちフラワーバレンタイン推進委員会にコンタクトいただきましたが・・・
- 2008年、僕はロンドンの「ゴードン・ラムゼイ」からこの東京の「ゴードン・ラムゼイ at コンラッド東京」に、何としてもミシュランの星を獲得するミッションを持ってシェフ・ド・キュイジーヌに就任しました。
就任後10ヶ月でミシュランの星を取らなければ、東京の店の存続は難しいという厳しい条件でしたが、今のところ4年連続で星が獲得できています。
- でも、どうしても日本のバレンタインに満足できなくて(笑)。そんな時にネットでフラワーバレンタインの存在を知りました。フラワーバレンタインのバックストーリーが、僕の考える理想のバレンタインの姿と同じだったので、ぜひ一緒に取り組めないかと考えたのです。
男性から女性に愛や感謝をこめて花を贈る、そして素敵なディナーを二人で楽しんでいただく・・・僕は自らそうしたディナーを提案していくことで、レストランからも日本のバレンタインデーをより大人の文化にしていきたいと思っています。
- 何と力強いお言葉!その心意気に、一流のシェフでありエンターティナーである自信がみなぎっていらっしゃいます。
そんな前田シェフにとって、「花」とはどんな存在なのでしょうか。 - 僕は京都の呉服卸商の父のもとに生まれ育ちました。また、母が茶道と華道の師範だったこともあり、幼い頃から家庭には茶花など花が身近な存在でした。
今思えば、料理にも季節があり、花にも季節がある、そういった自然の移ろいに刺激をうける素地が生まれ育った環境にあったのでしょう。
花の力というか、そのメッセージ性に気づいたのは、家族と離れ海外で働いている時でした。たとえば、メールで祖母の入院を知った時、すぐにかけつけることはできなくても、お見舞いの気持ちを伝えたくて花を贈りました。ロンドンにいても僕はおばあちゃんを心配しているよ、という“気持ち”を伝えるのに花が一番ぴったりだったのです。
- また、家族の誕生日や母の日にはやっぱり花を贈りました。十数年も家をあけている息子がこんな風に花を贈れるほど大人になったんだよ、ということを花に託しました。形がない、目に見えない自分の“気持ち”を、形もあり目に見える花がかわりに伝えてくれていたと思います。
- 素敵なお話ですね。前田シェフはつい先日ご結婚一年目の記念日だったと聞きました。
奥様とはどんな花のエピソードがありますか? - 実は妻との付き合いのきっかけが「四つ葉のクローバーのプレゼント」でした(笑)。プロポーズの時は12本のバラと指輪で(照)。そして、先日の結婚記念日にはバラを1本贈りましたが、これから毎年1本ずつ増やしていこうと思っています。 僕は人生にも季節感を持たせたいと思っています。クリスマスやニューイヤー、それぞれの記念日・・・イベントには ちゃんと意味があるわけですから、本来の意味を大切に、毎年同じことをして年を重ねていきたいと思うのです。 バレンタインもその中のひとつですよね。
- お花はどんな風に選んで買われるのでしょう?
- お店選びには気を遣いますが、基本的にはお花は花のプロである花屋さんにおまかせします。自分がプロの料理人という意識を持って仕事しているからでしょうかね、やっぱりプロの領域ってあるだろうなって(笑)
どういう人にあげようとしていて、その人がどんな人柄かなど伝えて花束を作ってもらいますが、基本的にはプロにおまかせ、というスタンスですよ。
デートに男性がフラワーギフトを持参することがポピュラーですが、日本人の男性にとっては、バレンタインのためにレストランを探して予約してそのうえ花も買って・・・と慣れないことの連続でどんどんハードルがあがってしまうので、今年の「ゴードン・ラムゼイ at コンラッド東京」のバレンタインディナーでは、お店であらかじめフラワーギフトもご用意するプランを考えたのです。
- 最後に、前田シェフが考える理想のバレンタインディナーをご紹介しましょう。
- 僕がヨーロッパやアメリカで見てきた、本物のバレンタインディナーをぜひお客様に提供したいと考えています。
ご予約のお客様がレセプションからテーブルに案内されるところからすでにディナーは始まっています。
テーブルに座られるとまずウェルカムドリンク、カナッペが出る頃にあらかじめ用意していた12本のバラの花束「DOZEN ROSES」をお持ちし、男性から女性にプレゼント。そのバラの花をシャンパンクーラーにさっと挿して、バラの花を楽しみながら前菜がスタート・・・
といった感じにお客様のテンションを上げていきます。
続けてメイン料理、チーズ、プレデザート、デザートと続く中でお料理ごとにおすすめのワインをサーブ。もちろん、お客様のご要望によって、ディナーの最後の締めくくりに愛や感謝の気持ちをこめてバラをプレゼントするシナリオも良いですね。
12本のバラの花にはそれぞれ意味があるのです。それがまた素敵な物語ですよね。
お帰りになるそのときまで、夢見心地のひとときを僕とスタッフがお約束します。ご期待ください。
- わぁ、ロマンティックなバレンタインディナーになること間違いなしですね!
前田シェフの魔法にかかってみたい!そんな風に思う素敵なインタビューでした。
今年のバレンタインはぜひ、大切な方と、美食とバラのディナーを楽しんでみませんか?
(取材&TEXT N.OGAWA)